キャベツ畑でつかまえて

観劇の長い感想と記録を残すブログです

2023年9月マチソワの思い出

観劇を趣味にしてると「いやそんな観たい演目を同時期にやられても体は1つなんだが……?」という時期にぶち当たりますが、この9月もそんな感じですよね。
推しが出ていない(というかチケットが取れなかった)ので通う演目はないのに、あんまり家にいられない気がする。色んな録画画貯まっていく…… 大奥も一気見するつもりで残してるのに。

という訳で、私にしては今月かなりマチソワをぶち込んでいろんな劇場にいってるのて、ちょっとその移動の思い出を残しとこうと思います。

13日(水) 国立劇場⇨シアターオーブ

国立劇場さよなら公演だし、『妹背山婦女庭訓』の通し狂言なんてなかなか無いし。12時開演回しかなくて働く大人にはつらいけど、行くしかなかった。
両花道(上手側にも花道がある客席構成)はやっぱり珍しいし、悲しい話だけど観て良かった!

夜はミュージカル・アナスタシア。2020年に失ったチケットを取り戻したかった。
ハッピーで素敵なミュージカルで楽しかった!

マチソワ間の移動は30分弱だけど、半蔵門線1本なので大した移動ではない。が、渋谷駅で迷った。

 

15日(金) シアターウエスト⇨シアターイース

3ペアともいろいろな抽選を申し込んで、当選したのがこの日だけだった。
私はこの16時回しかチケット無いけど、残って19時半回を観た人も多いんだろうなー

一度は観てみたかった木ノ下歌舞伎『勧進帳』某抽選に当選したのもあって、観てみた。面白い試みだし、別の演目も観てみたいな。

隣に移動するだけの簡単なジュルソワ。

17日(日) 歌舞伎座⇨よみうり大手町ホール

とうらぶ歌舞伎を観てから歌舞伎が高まってるので、秀山祭は観たかった。とりあえず一幕見で金閣寺と土蜘を。華やかで楽しかった! 

アンドレ・デジール 最後の作品
北斗の拳ミュージカルで素晴らしい脚本を書いた高橋亜子さん、映像で観て良い音楽と思ったGOYA清塚信也さん、そのGOYAやマリーキュリー演出の鈴木裕美さんのオリジナルミュージカル!

すごく良かった…… 観たいミュージカルだった。Mastodonでぽろぽろ感想言ってるけど、そのうちちゃんと書くかも。

チケット取ったときは有楽町のよみうりホールと思い込んでててね……
大手町でも15分弱で行けるので大丈夫!

23日(祝) 新国立劇場歌舞伎座

ミュージカル生きる、前回公演でボロ泣きしたので観ない選択肢はなかった

だから種之助くんと鷹之資くんが注目の若手なんです、いま。今日も一幕見で車引だけ。連獅子も狙ってたけどチケット取り損ねました。
あと実は国立劇場文楽第三部(19時開演)も狙ってたけどチケット売り切れてた。残念だけどよかった。

 

これがいちばん遠いマチソワでした。

 

そんな楽しい観劇強化月間でした。
楽しかった… けど、自分の体力の限界がわかったので、もうこんなスケジュールは立てない。たぶん。そうできたらいいな。

ミュージカル『アナスタシア』観劇感想

ミュージカル『アナスタシア』を観てきた。

ディズニーアニメのミュージカル版で、2020年3月の日本初演を経て、今回が再演版。
2020年といえばコロナの走りのころで多くの公演中止が続いていたころ。アナスタシアは、私が確保していたチケットも払戻しとなった最初期の1枚だった……
アーニャ役の木下晴香ちゃんがカテコで「あの時は舞台稽古も全て終わった段階で初日の延期が発表された。今日こうして予定通りの初日を迎えられて本当に嬉しい」と挨拶してて、本当に、私も聞いてて感無量でした。
コロナ禍もぜんぜん終わってないけど、このままつつがなく公演が続けられるよう願ってます。


さて。

宝塚版を配信で観て以来のアナスタシア。楽しかったー!!

オルゴールのような円形舞台、回転して転換する装置とLEDを使った背景映像を活用して、スムーズに場面が転換してて、テンポが良かった。
あと音楽がずっと印象的。
2幕のバレエの場面で『白鳥の湖』がネヴァ川の歌に変わったり、ネヴァ川の音楽に合わせて三羽の白鳥が踊ったり、ロットバルドの登場に合わせてグレブが歌ったり。
「上手いな~」と言うのも失礼かもだけど、全体的に完成度が高くて、オルゴールの奏でる夢物語の中にひたって、そっと蓋を閉じて終わるようなミュージカルだった。


皇女アナスタシアの伝説自体が「こうだったら良いのに」という夢のような語で。
史実のマリア皇太后は宝物と再会する事はなかった。でも、本当に「こうだったら良いのに」と思わせてくれる美しい物語で、そこがディズニーらしいし、ミュージカルとしての美しさでもあると思う。

キャストの皆さんも素晴らしかったです。晴ちゃんアーニャは可愛いし、相葉ディマもかわいい。

キャストが変われば印象が変わる演目でもあると思う(特にグレブ)
今月はみんな忙しいけど、少しでも気になる人は観てほしいな。私はしばらくリピチケ悩みます。

音楽劇『精霊の守り人』観劇感想(ネタバレあり)

音楽劇『精霊の守り人』を観てきた。
日生劇場60周年記念公演ということで、年表などの掲示あり。また、ファミリーフェスティバルの一環なので、子ども向けクッションや消毒液やらが用意されてて、あちこちの装飾がとても可愛かった。

 

さて、本編ですが(以下の感想はクライマックスのネタバレを含みます)

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歌舞伎『刀剣乱舞』観劇感想

刀剣乱舞歌舞伎を観てきた。

いやぁ…… よかったですねとうかぶ!

当方、歌舞伎はたまに、新作歌舞伎も少々*1観たことがある程度、刀剣乱舞は原作ファン三日月推しメディアミックスはいちおう制覇してる程度のミュオタですが。

とうらぶファンとしても歌舞伎ファンとしても納得で、楽しかったです。

「江戸時代に刀剣乱舞があったら」というコンセプトで作られただけあって、すごく歌舞伎らしい。人ならぬものが人に化けてるのも、ちょっと強引な展開もメタ台詞も。そもそも、「あの人が本当は○○だったら」という歴史ifものを量産してきた分野なので、物語として相性が良いのは間違いなかった。

現代的な邦楽アンサンブルの下座音楽や音声のみの審神者などの演出は刀剣男士たち「未来のできごと」の時のみ、義輝たちとの「現在」場面は本格的な丸本物のような義太夫、浅葱幕の前で大薩摩を演奏、出てくるのは女性の琵琶奏者*2、華やかな大立ち回りの終盤に盆が回ってからの背面飛び、等など、古典と現在がほどよく融合してたと思います。

設定の説明もしっかりしてるのでとうらぶを知らない人もすんなり理解できたと思うし、初めて歌舞伎を観る人でもじゅうぶん歌舞伎を満喫できたろうし、双方の導入としてとってもよかった。そしてそして、歌舞伎パートが本当に素晴らしかった!

「初めて観る古典演目です」と言われても納得できてしまいそうな場面で、梅玉さんたちベテランがしっかり締めて、大きな土台の上で若手の活躍を観るの、良い時間でしたね…… 特に鷹之資さんほんとよかったです。他の演者さんも歌舞伎で観たくなりました。

 

ところで歌舞伎は歌舞伎座では毎月いろんな歌舞伎をやってるし、地方公演もあるし(詳しくは松竹の公式サイトを観てね)、国立劇場でもお値段お手頃にやってたりするし(いまの建物はもうすぐ無くなるけど)、どこもだいたい直前で良席とれちゃうんですよね……
リアル観劇のハードルが高い人にはシネマ歌舞伎なら映画館で観ることもできるし、テレビならNHKやBS松竹東急で頻繁に放送してるし、わりとホイホイしやすい芸能だなって思います。世間で言われるよりわりと、舞台上も客席も自由ですし。

今回で歌舞伎を知ったひとが、他の演目も楽しんでくれるといいな。というか、わたしがもっと観に行きたくなりました。

*1:NINAGAWA十二夜、野田版のいくつかは観た、三谷さんの風雲児たちナウシカシネマ歌舞伎で、スーパー歌舞伎は未見という偏りっぷり。

*2:それでも女性奏者はこの人だけで、義太夫長唄を弾くのはみんな男性なんだな…… と個人的に思いました。女性が立ってるだけすごい事なのですが

ミュージカルDEVIL観劇感想

ミュージカルDEVILを観てきた。

2021年のプレビューコンサートを経ての本公演で、プレビューを観たときの感想を書いてる。

おそらく本来は二幕構成なところを少しの台詞と音楽のみにして(あとおそらく登場人物もカットして)70分ちょいにまとめており、前提としているところが語られなかったり少し説明不足で気持ちが入りきらないところはあった。

ibara00.hatenablog.com

 

いやぁ、全くの見当違いでしたね!

本公演も休憩無し105分、さすがに30分増えてるだけあって途中の展開は分かりやすくなっていたけど、なんかもっと、ジョン・ファウストの周囲の人間関係とかが1幕冒頭で語られると思っていたので。初っ端からブラックマンデーが来るので、勘違いに気付いたけど。

プレビュー以外の前情報を仕入れないで観劇したけど、最低限の下調べはするべきだったかな、とちょっと反省。演出家が変わってるのも観終わってから知った……(プレビュー広崎うらんさん、本公演荻田浩一さん)
プレビューコンサートと本公演は全く別のプロダクションで、異なるコンセプトの公演でした。

 

そういう私の戸惑いはさておき、楽曲の良さは存分に楽しめる公演でした。特に、マイケル・K・リー、ハン・ジサンのオリジナルキャストの歌は大変刺激的。ところどころ背景映像に字幕のように歌詞が表示されるので、英語詞でも問題なし……
というか、問題なかったのでXblackも韓国語詞で歌っても良かったのでは。

他のメインキャスト、AKANE LIVさんの美しい歌声も良かったし、ジョンとジョンの影の東山光明さん大山真志さんも素晴らしかった。「ジョンの影」という演出の効果はさておき、お二人の歌はとても良かった。ちなみに音楽監督島健さん。オケの音も格好よかった。

 

衣装があんまり好みでないのと、X二人の歌唱シーンで毎回天使と悪魔の絵画を表示するのはちょっと、示したいものがあからさますぎてすごく宗教っぽさを感じて居心地が悪かった。この辺あまり良い演出とは思わなかった。
が、雰囲気は良かったしなんと言っても楽曲がかっこいいので。機会あればまた観たい演目だった。

ミュージカル「スパイファミリー」観劇感想

※面白かったけど辛口です

 

ミュージカルスパイファミリーを観てきた。

3/15ソワレと3/19マチネの2回、Wキャストも瀧澤ユーリと子役以外は観る事ができた。

全体的には楽しかったし、ミュージカルに慣れてない人が帝劇に足を運ぶきっかけとなったこと、マンガを再現していて原作ファンが楽しめたことはとても良かったと思う。
特に、朝夏まなとさんのシルヴィア、鈴木壮麻さんのヘンダーソン先生、岡宮来夢くんのユーリは完璧だった。アーニャたちも芸達者でとても可愛かった。

メインでは拡樹ロイドが良かった!
リトショの時も「こんな悲劇を含んだ話だったのか」と思ったけど、同じ現象というか。ロイドさんのスパイとしての苦悩や何でもできるのに一般人の感覚が分からないおかしさ、哀しみ、平和を願う気持ちがビシビシ伝わってきた。あとかっこよかった。
それからふうかヨル! 私の思うヨルさんそのままで、帝劇経験とマンガ原作ミュージカル経験の高さがうかがわれた。

Wキャストはこの2人が好きだったけど、美玲ヨルさんも守りたい天然さで「ロイドさんがヨルとアーニャを見守っている」という言葉に説得力があったし、ウィンくんも誠実な役作りだったと思う。

アンサンブルキャストの団結力でグループナンバーはどれも楽しかったし、木内フランキー絶対アーニャちゃんたちと普段から仲良しなのが伝わって、それもとても良かった。個々のキャストはとても良かった。

衣裳やグッズもたいへん良かった。プログラムの秘蔵写真がヤバすぎた。

アクションも良かった。ロイドさんはスマートだし、ヨルさんのアクションは吹き替えだけどスムーズに入れ替わってて気付かなかった人も多いと思う(私のことです)
細かい笑いも多く、楽しかった。

でもミュージカルとしては物足りなかった。
「帝劇で観劇したな」という満足感は得られなかった…… というのが、正直なところ。

欠点はいろいろある。
メインキャストのうち初帝劇の方々の歌唱面があまりよろしくない*1
でもこれはキャスト発表時に予想してたことなので、想定の範囲内、というか気になるほどでもなかった。

そもそも曲があまり良くなかった。
歌詞が叙事的というか、「子どもが泣かない世界を」とか「弟を安心させたくて」とかそれしか言ってない単純な歌詞で、曲の中に起伏がない。特にロイドのような嘘つきな人物がセリフでは言わない内心を歌い上げるのがミュージカルの醍醐味… かと思いきや、内心を明かす歌は数行で終わり、一番歌い上げるシーンは偽りの妻への偽りの愛である*2。せっかくのソロなのに盛り上がりようがない。
なお、作中もっとも感情の起伏に富んだソロはユーリの歌でした。くるむユーリはよくやったと思う。

 

あとは、ストーリーがだらだらしてる事。結果的に上演時間が長くて子役がカーテンコールの最後まで出演できないのは、残念すぎる。

原作が一話完結型のコメディだから多少は仕方ないにしても、エピソードの連なりばかりで大きなストーリーのうねりを感じられなかった。これは、登場人物の感情のクライマックスと、物語のクライマックスと、ミュージカルとしてのラストがかみ合ってないのが要因だと思う。
例えば、ロイドの「子どもの泣かない世界を」というのがミュージカルとしての大きなテーマのはずだが、1幕と2幕のそれぞれ真ん中で語られており、そのあとにドタバタエピソードが続くので、どうにも印象に残らなかった。
幕間に入るタイミングも良いとは言えない。*3

1幕は「妻役を見つけて結婚する」2幕は「イーデン校合格」という大きな目標達成と、幕が下りるタイミングがズレていて、「いつ終わるんだろう」と感じてしまった。その結果カタルシスを感じられず、だらだらと感じられたのかと思う。
そうして話が続いた結果、アーニャがカーテンコールに最後まで出られないのは…… 優先順位を間違えてしまったのではないか。

もう少しエピソードを削って休憩込み2時間半にするか、いっそ休憩なし100分のドタバタミュージカルにした方が満足感は得られたと思う。
原作は好きだしいいところもいっぱいあるので、次は脚本を変えてクリエでやってほしい。需要に対して箱が狭い? 千秋楽ライブビューイングやればいいと思うよ!

 

「帝劇で」「東宝がアニメも手がけているスパイファミリーを」「人気キャラを出して」「3時間弱で」という条件が先にあったのだと思う。
その中では最善を尽くしてたと思う。
キャスティングも東宝らしくて悪くないと思う*4
でも、もうちょっと作品に合った脚本家・演出家・劇場を選んで欲しかった。

ま、これは私の好みの問題ではあります。全体的に楽しかったのも本当。ただ、物足りなかったのが残念で。
私の受容する器が足りなかっただけなのかな。

*1:ただ19日に観たフィオナはとても良かったので、15日はマチソワでお疲れだっただけかもしれない。帝劇は特殊な舞台とも聞くので、慣れもあるかも

*2:このシーンなど、マンガのナレーションによるツッコミをそのまま文字で表示しているのは、まぁ斬新だけど舞台芸術としてはどうかと思う

*3:お互いしかないとデュエットして爆発の中でプロポーズ、という感情も見た目も目立つシーンのあとに、家族ほっこりエピソード、さらにユーリの不穏なソロがあり、唐突にみんな出てきてテーマソングを歌って1幕が終わった

*4:某家で某氏が事故ったのを観て以来、キャストが合ってるかを重視しております。今回ウィンくんが微妙なラインだったかな…… でもセーフ