ロミオ&ジュリエット観劇感想【恨みつらみ編】
2021年6月4日マチネと6月10日ソワレで、ミュージカルロミオ&ジュリエットを観てきた。
2回行ったのはもちろん、この演目が好きだったからだ。事前の情報ではすごく楽しみにしてて、なるべくダブルキャストは両方を観たい、スケジュール的にとりあえず2枚だけど様子を見て足したい、と、思ってた。
過去形。
いまは違う。
いまはもう、ロミジュリについて恨みつらみを無しに語ることはできない。
とはいえ毎回毎回、恨みつらみを書き連ねるのも疲れるし、褒め感想を読みたいファンの雑音を増やすのも申し訳ないので、ここで全てを吐き出して終わりにしたい。
要するに、「どうやって伝えよう」問題である。
私とロミジュリの出会いは2017年版であった。
2011年の男女版初演からさらに演出が変更され、ロミオ達はスマホを持つようになり、AEDや既読スルーなどが加わった。らしい。
これはこれで一部に不評だったらしいけど、私はこれが出会いだったので、「まぁこんなものか」と受け入れていた。
それよりも当時のキャスト、特に推しのロミオと馬場ベンヴォーリオに夢中になり、Wキャストによる関係性の変化にハマった。
馬場ベンの柔らかな「どうやって伝えよう」が大好きだった。
2019年の再演が発表されたとき、ベンヴォーリオのキャスト変更は残念に思いつつ、三浦涼介・木村達成という新たなベンヴォーリオの誕生には単純にワクワクした。
がんばってチケットを何枚か取って、そのうち1枚は初日のチケットだった。
もちろん推しのロミオや新キャストの葵ジュリエットも楽しみだった。
でも一番の楽しみはりょんくんの、生執事では推しと共演し、1789では推しとはまた違う熱いロベスピエールを魅せてくれた彼の、ベンヴォーリオだった。
そうして観た初日の公演の、あの衝撃は忘れられない。
ベンヴォーリオ一番の見せ場、大事なソロの場面で、背景映像にインスタのような思い出写真が何枚も流れたあの衝撃を。
何しろ初日だったから、さすがにツイートはいろいろ遠慮したけど、脳内は大荒れだった。
なんなの?
ベンヴォーリオのソロだよ??
そりゃ2017年の時もよく分かんない映像だった。でかい手がETみたいに指さすやつ…… でもそれはまぁ、無機質だから無視できた。
でも写真て!
客を笑わせたいのか??
言いたい事はわかる。
かつての思い出を振り返っているんだよね。
でもそんなの、役者が歌えば観客は勝手に脳内に思い浮かべることだ。
眼前に映る写真はこちらの想像を狭める、ただの押しつけでしかない。
観客の鑑賞力、役者の歌唱力を信頼してない証だ。
アンケートを書いた。
1789のオタクはアンケートの熱い声で円盤を勝ち取った経験があるので、アンケートの力を信じていた。
Twitterでも書いた。
正式タグを付けるのはあまり趣味じゃないけど、これだけは書いた。
公式に読んで欲しかったので。
ロミジュリ東京千秋楽おめでとうございます‼ 音楽もダンスも、キャスト皆さんの熱演も素晴らしかったです。ただ一点、ベンヴォーリオのソロ「どうやって伝えよう」の演出は考え直していただきたいです。一人ならず「笑いそうになった」という感想を聞きました。笑う所じゃないのに。#ロミジュリ2019
— いばら (@ibara0709) 2019年3月10日
もちろん、あのインスタ風写真を良いと思う人がいて、選ばれたのだと思います。あの演出で感動を増す人が多いなら、それで良い。私はもうR&Jに向いてないのでしょう。でもそうでないなら。地方公演の前に、映像に残す前に、変更していただきたい。2017年の映像はあんな邪魔じゃなかった。
— いばら (@ibara0709) 2019年3月10日
アンケートを書いたのは私だけじゃ無い。
閉演後のロビーで何人もアンケートを手にしていたし、覗くつもりじゃなくても「背景映像」の文字が見えた。闘ってるのは一人じゃないと、心強かった。
結果的に地方公演でも同じ演出が行われ、それが円盤に残る事となったが、まぁ、仕方ない事情もあるのだろうと、思えた。
そうして迎えた2021年版である。
さすがにあのインスタ演出は無くなるだろうと思っていた。何しろ大不評だったし。
直前でやってた宝塚星組のロミオとジュリエットでは(そもそもの設定も違うが)大ナンバーに余計な演出は無く、シンプルな背景で歌を存分に味わう事ができた。
大きな期待と一抹の不安を抱えながら初日の感想を待った。
その結果……
インスタ演出はバージョンアップして継承されていた。
キャピュレット卿のソロ「娘よ」の背景絵画が雑コラになるオマケ付きである。
画質をよくすれば良いってものじゃない。
種類を増やせば良いってものでもない。
カラー→白黒→絵画風と加工するとか何なの? 何をみせたいの?
私はベンヴォーリオを観ていたいのに、背景映像が「こっちをみろ」と訴えてくるんだが、ミュージカルってそういうものか??
この演出を変更する事はできたはずだ。
観客の声をいっさい無視するにしても、一つ一つの表現について再度の検討はあったはずだ。
キャストの写真を撮る前に何らかの意見は交わされたはずだ。
それでも残ってしまった。
私が一番がっかりしたのは、演出家が客と役者を信頼していない事だ。
顔写真をわざわざみせるような蛇足をしなければ、伝わるものも伝えられないと思われている事だ。
あるいは、この手法が必要な(あるいは感動的と受けとめる)ファンに向けられた演目であり、私は対象とされていないのだろう。
私にとっては絶望的にダサい演出だけど。
つまるところ、ロミジュリや小池演出作品は私には合わないという事だ。
あのインスタ演出では、私はロミオ&ジュリエットという演目を楽しむことができない。
後ろの写真が役者の演技を邪魔し、こちらの集中力を削いでくるのだ。
それも物語のクライマックスにおいて!
私にできるのはあとはもう「観ない」という選択だけだ。
合わないのが分かってて高いお金を使うような、馬鹿げた話はない。
ロミジュリという演目が好きだった。
小池演出もずっと楽しんできた。
でももう、気付いてしまった。
彼の演出は私には合わない。
大事なポイントのセンスが絶望的に合わない。
ロミジュリは好きだったけど、もう演出家が変わらない限り観ることは無いだろう。
再演は続いて欲しいが、別の演出家に変わることを心から期待している。
以下、蛇足だけど他の気になるポイントを少し。
「本当の俺じゃない」を聞いてるキャピュレット夫人
ミュージカルの歌って基本的に「心情が歌として表現されてる」んだと思ってたんだけど、ティボルトはマジで歌ってるの?
夫人は立ち聞きしてそれが物語のキーとなるんだから、口に出してるのは間違いないよね。
居間とか廊下で「好きなんだ、ジュリエット……」って歌ってるor独りごと言ってるティボルト想像すると面白すぎるんだが。
「ロミオはどこどこ」の茶番
これ、2019年版まではカーテンもあって「装置の移動のために必要な時間稼ぎかな」って生暖かく眺めていたけど、今回は移動もないしただの寒い茶番だった。
せめて役者の皆さんが楽しい時間なら良いんだけど。
熟女アプリ
古い。
これに限ったじゃないけど、年齢を茶化して楽しいか?
そのタイプの笑い、時代遅れだと思うんだけど。
パーキングからエレベーターに乗って
どういう構造の家だよってのと。
エレベーターあるような高層住宅なら、自力で登れるような部屋を娘にあてがうなよ……
今回は特に、背景映像でキャビネット邸から高層ビルが見えてたので、ジュリエットの部屋が何階か気になった。それともロミオは猿なのか?